■ワンネス(全体意識)は、自ら作り出したこの宇宙のすべてを知り尽くしています。いわば、「全知者」です。全知者ですから、知らないことは一切ありません。逆にみれば、ワンネス(全体意識)が全知者にとどまる限り、それ以上の新しい創造はないと言うことです。
■それでは、新たな創造を生み出すにはどうしたらよいのでしょうか。そのためには、ワンネス(全体意識)の中にわざと特殊な視点からしかこの世界を認識することができない者(限定知者)を作り出して、その者に自由に創造をさせることです。そしてその限定知者として、ワンネス(全体意識)によって生み出されたのが生物です。
■生物になぜ新たな創造が可能なのでしょうか。それは、生物がそれぞれ独自の視点からこの世界を眺めて、この世界の中で行動するからです。この特殊な視点はワンネス(全体意識)の視点とは異なるものです。たとえば、ある設計者がビルを建設したとします。その設計者はそのビル全体を隅から隅まで熟知しています。ビルが竣工し、そのビルは様々な人たちによって利用されはじめました。ベンチャービジネスを始めようとする起業家、キャリアアップを図ろうとするサラリーマン、会社を訪れる顧客、食堂で働く料理人とアルバイト、その食堂を利用する人たち、清掃員、ATMでお金をおろす人などなど。この場合、ビルの設計者の視点がワンネス(全体意識)の視点になります。一方、そのビルを利用する多様な人たちが生物です。生物がそれぞれの独自な視点から、それぞれ独自な行動を行うことによって、これまでのワンネス(全体意識)の創造の中に、新たな創造が生み出されていくのです。
■さらにワンネス(全体意識)は、多種多様な生物を作り出した上で、それらの生物が相互に緊密な関係で結びつけられる形の生態系を作り出しました。生態系が作られることによって、生物の創造、進化はさらに複雑で、精緻なものとなっていきました。(以上については、沢登佳人『生命とは何ぞや 生と死の総合科学的解明』[現代人文社、2009年]48頁参照)。