●(3)の考察から、量子は常識では理解することの難しい奇妙な性質を持つことが分かります。これをどのように理解すべきでしょうか。
(1)まず、量子は飛び飛びの値しかとらないことから、量子は、常識的に考えられる物質ではなく、「離散的な値でしか測定できない何ものか」ということになります。
(2)次に、量子は、観測を行う前は波動の状態にあり、観測・測定すると波が一点に収縮し粒子として確定します。この点は、量子の確定(定在化)に、私たちの観測・測定が何らかの形で関係することを示唆しています。
(3)位置を正確に測定しようとすると運動量は不確かになり、運動量を正確に測定しようとすると量子の位置が不確かになる不確定性原理は、物理法則としては奇妙ですが、私たちの認識のあり方と考えるとたいへん常識的です。
(4)シュレーディンガー方程式を素直に解釈すると、量子とは「存在確率の波」ということになります。それでは、存在確率の波である量子を何が粒子として確定するのでしょうか。ひとつの解釈として、上で述べたように、私たちの観測・測定が量子を確定させたという解釈が可能です。
(5)EPR相関によれば、相関する2つの量子について、観測によって一方の量子状態を確定すれば、相関するもう一方の量子についても、観測した量子と相関した形で確定します。EPR相関は、観測・測定行為が観測した量子の物理量ばかりでなく、それと相関する系全体を確定させることを示しています。