(3)量子の奇妙な性質

●(1)(2)では、私たちが「外的世界」と考えているものは、実は、「私たちの意識が構築した世界」であることを明らかにしました。

●それでは、私たちの意識を介さない「世界それ自体」は、どのような構造を持つのでしょうか。精神的な部分を除くと、この世界は、すべて物質(反物質も含めて)から構成されています。そして、物質の仕組み、性質などを研究する学問が物理学です。

●物理学の中でも、原子などミクロなスケールの現象を扱う学問を「量子力学」といいます。量子(quantum)とは、物質を構成する原子、さらにそれを形作る電子、陽子、中性子、また、光子やニュートリノ、クォーク、ミュオンなどの素粒子のことです。

●量子力学の研究から、量子には以下の性質があることが分かっています。

(1)量子は、物理量が連続的ではなく、離散的な値(飛び飛びの値)しか取りません。この量子の最小単位は、発見者にちなんでプランク定数と呼ばれています。プランク定数は、記号hで表され、その値はh=6.62607015×10-34J・s(ジュール秒)です。

(2)量子は波動と粒子の二重性を持ちます。量子は観測を行う前は波の状態にあり、観測・測定すると波が一点に収縮し粒子として確定します。この点は、有名な二重スリット実験が示すところです。

(3)不確定性原理によれば、量子の位置と運動量の両方を同時に正確に測定することはできず、位置を正確に測定しようとすると運動量は不確かになり、運動量を正確に測定しようとすると今度は量子の位置が不確かになります。

(4)量子力学の基本方程式に、シュレーディンガー方程式があります。シュレーディンガー方程式の解(ψ)が何を意味しているかについて議論がありましたが、マックス・ボルンが、ある場所で量子が検出される確率を示すものだと解釈し、現在の通説になっています。シュレーディンガー方程式自体には、波を粒子に確定(または収縮)させる要素がない点については、フォン・ノイマンが数学的に証明しています。

(5)EPR相関によれば、相関する2つの量子について、観測によって一方の量子状態を確定すれば、相関するもう一方の量子についても、観測した量子と相関した形で確定します。これは2つの量子がどれほど離れていても、同じ結果になります。しかも、この相関は光速度を超えて行われます。この現象は、量子もつれ(quantum entanglement)と呼ばれています。

☞果てしなく広がるこの世界が存在することと、私たちが世界を認識することとは同じことである