【問2】なぜ、私たちの意識が実在(世界)を創造していると言えるのですか。科学的根拠を示してください。

■これはとくに量子力学の知見に基づいています。量子とは、物質をどんどん小さくしていった先にある物理量の最小単位です。原子、電子、中性子、陽子などがその代表格で、その他、光子、ニュートリノ、クォーク、ミュオンなどがあります。これら量子の不思議な振る舞いを説明する学問が量子力学です。量子力学によって明らかとされた量子の性質を説明しようとしたとき、私たちの「意識」が「実在」を生み出していると考えるのが、一番矛盾なく量子の振る舞いを説明できるのです。この点は、今後、詳しく解説していく予定ですので、ここではポイントだけを示しておきます。

(1) 量子は波の性質を持っていますが、量子エネルギーはとびとびの値(量)しかとりません。この量子の最小単位は、発見者にちなんでプランク定数と呼ばれています。物質がとびとびの値しかとらないというのは常識に反しています。この現象に関するひとつの見方として、量子がとびとびの値なのは、私たちが世界を観測する(認識する)際に、とびとびの値(すなわち粒子)である方が、観測(認識)しやすいからだということが考えられます。

(2) 量子は観測を行う前は波の状態にあり、観測することによって波動が一点に収縮し粒子として確定します(二重スリット実験)。この際、「観測」とは何かが問題となりますが、ひとつの解釈として、私たちの意識が可能性の波である量子を粒子に確定させたと考えると、この現象をよく説明することができます。

(3) 不確定性原理によれば、量子の位置と運動量の両方を同時に正確に測定することはできず、位置を正確に測定しようとすれば運動量は不確かになり、運動量を正確に測定しようとすれば今度は量子の位置が不確かになります。これは私たちの意識のあり方とまったく同じです。むしろ、不確定性原理は、私たちの意識(認識)の原理と考えるとよく説明がつきます。

(4) 量子力学の基本方程式に、シュレーディンガー方程式があります。シュレーディンガー方程式の解(ψ)が何を意味しているかについて議論がありましたが、マックス・ボルンが、ある場所で量子が検出される確率を示すものだと解釈し、現在の通説になっています。この点を素直に理解すれば、「量子は存在確率の波として存在している」ということになります。それでは、存在確率の波である量子を、何が粒子として確定させるのでしょうか。シュレーディンガー方程式に、波を粒子に確定(または収縮)させる要素がない点については、フォン・ノイマンが数学的に証明しています。それでは何が。この場合、私たちの意識(観測行為)が波動関数を確定(収縮)させ、新たな波動関数を生み出すと考えるとよく説明がつきます。

(5) EPR相関によれば、相関する2つの量子について、観測によって一方の量子状態を確定すれば、相関するもう一方の量子についても、観測した量子と相関した形で確定します。これは2つの量子がどれほど離れていても、同じ結果になります。しかも、この相関は光速度を超えて行われます。この現象は、私たちの観測が観測した量子のみではなく、関係する系全体を確定させることを示しています。そしてこの現象は、私たちの意識(観測)がこの世界を一挙に確定させているのではないかという推測につながります。

(6) 静止した天体から発せられた光と、時速1万メートルで地球に向かって進んでいるロケットから発せられた光の速度は、ともに秒速29万2792.458キロメートルです(光速度不変の原理)。この現象は、物質の性質という観点からみると理解が困難です。むしろ、私たちがこの世界の空間把握をするための原理、私たちの認識の原理と考えると理解がしやすいと思います。

■以上のように、量子力学の諸原理および特殊相対性原理から、私は、私たちの意識作用(世界を観測すること)が、実在(世界、宇宙)を生み出しているという結論に至りました。この考え方は、量子力学の分野では、ノイマン=ウィグナー理論と呼ばれるものです。しかしノイマン=ウィグナー理論は、量子力学の研究者の間ではまったく受け入れられてはいません。なぜなら、科学の分野に、「意識」という検証不能な概念を持ち込んだからです。しかし、量子力学の諸原理自体が「観測行為」との関係なしには説明できないのですから、こうした考え方を排除するのは間違いです。そして、上述したとおり、量子の不思議な振る舞いを全体として説明しようとすると、「意識」の観点から説明するのが最も論理的だと思われるのです。

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