(8)現代人の知恵

■現代人は、ストレス多き社会の中で生きています。悩みは尽きません。「なぜ自分はいじめを受けるのか」、「なぜ自分は他の人ができることができないのか」、「なぜ自分は貧困家庭に生まれたのか」、「なぜ自分は不自由な生活を強いられるのか」、「なぜ自分は人間関係でこんなにストレスを感じるのか」、「なぜ自分はやる気が起きないのか」、「なぜ自分だけ病気になるのか」、「なぜ自分は就職が決まらないのか」、「なぜ自分は大変な仕事を任されるのか」etc.

■人間関係で疲弊し、体調を崩してしまう人も珍しくありません。20代の若者の40%以上が非常に疲れているという調査結果があります。若者は社会的経験が少ないので(これは逆に新たな創造を生むチャンスが多いということでもありますが)、精神的ストレスをため込みやすいのがひとつの原因と考えられます。私たちは、ストレスの多い、悩み多き時代を生きています。

■こうした現代社会にあって、現代人が知るべき「知恵」があります。

■少し視点を変えて、野生動物の世界に目を向けてみましょう。たとえば、タテゴトアザラシは、流氷の氷の上で出産をします。生まれたばかりの赤ん坊は、流氷の隙間に落ちてしまうこともしばしばです。猛吹雪の中、親にはぐれ命を落とす赤ん坊もまれではありません。野生動物たちは、たいへん厳しい自然環境の中で、懸命に生きています。ある動物家族に焦点を合わせてその生活ぶりを追ったドキュメンタリーをみると、すべての動物が厳しい「試練」に直面しながら生活していることが分かります。すべての生物にとって、生きるとは常に、「試練」を乗り越えていくことなのです。

■たとえば、何不自由ない家庭に生まれ、何の悩みもなく、幸せに育ち、幸せな結婚をし、何の苦労もなくしあわせな人生を送った人がいるとします(実際はそんな人は一人もいないのですが)。その人の人生は幸せなのでしょうか。おそらく、最後のときを迎え、自分の人生を振り返ったとき、私たちは、自分の生きがいが試練を乗り越えて「チャレンジ」したことにあったことを理解するでしょう。

■ですから、私たち現代人にとって最大の「知恵」とは、なぜ私たちには試練が与えられているのか、その理由を知ることです。

■各人に与えられた試練は、人類がこれまで誰一人として経験したことのない新たな状況です。なぜなら、世界は、科学技術の発展、気候変動、グローバリゼーションなどによって刻々と変化しており、しかも、各個人の状況は個人ごとにまったく違うからです。今それぞれの個人が直面する状況は、人類史上同じ経験をした人がいないのです。試練とは、言い換えれば、これまで人類史上誰も経験したことのない新たな状況ということです。

■なぜ私たちは、このような状況にさらされているのでしょうか。これは、全体意識が全宇宙をさらに発展させようとしているのです。全体意識はそれまでの知恵の総体ですから全知者であり、全体意識によって創造された世界(全宇宙)は、完全に調和のとれた世界です。しかし、調和がとれているために、それ以上の発展を望めない世界でもあります。全体意識は、世界をさらに発展、成長させることを本質的要素としています。

■そこで、全体意識は、自らをさらに発展させるための仕組みを自分自身の中に設けました。それが生物です。全体意識は、生物をわざと新たな状況に置いて、自由に行動させることによって、全宇宙に変化を生じさせ、世界をさらに発展させることにしたのです。

■そして、私たちの新たな挑戦は、全体意識の知恵(経験)の中に加えられ、全宇宙の発展につながっていきます。

■この状況は、私たちから見れば、私たちに脚本と演出とをまかされた舞台といえるでしょう。しかも、私たちは、その物語の主役です。私たちは、自分でストーリーを作り上げ、その舞台で自由に演じることができます。私たちは、自分に与えられた困難な状況にチャレンジして、困難を乗り越え、自己成長を遂げていくべき存在なのです。私たち自身も、自己成長を本質的要素としている存在です。

■そして、試練を与えられている理由が分かると、不思議なことに、チャレンジすることが、それほど苦にならなくなります。と言いますのは、チャレンジとは、重い課題を抱え込むことではなく、今ある「負」の状況を「楽」の状況へ変えることだと分かるからです。チャレンジとは、今ある苦しみから解放する道を探ることです。

■また、チャレンジとは何か特別なことをすることではありません。チャレンジとは、自分に与えられた状況の中で、「自分らしくあること」、「自分の思うとおりに自分の人生を生きること」です。なぜなら、現在、私たち各自が直面している状況は、人類がこれまで誰一人として経験したことのない状況ですから、それに対して自分らしく関わっていくことが、そのまま人類史上はじめての挑戦となるのです。

■「今はのんびりするときだ」と感じたら、何も考えずのんびり休息することも新たなチャレンジです。「今はリフレッシュするときだ」と感じたら、思い切り遊ぶことも新たなチャレンジです。むしろ、遊んでいた方が自由度は高まりますから、創造性も高くなります。

■私たちの未来には無限の可能性があること、そして、私たちは「自由に」未来を選択できること、それが私たちに与えられた最大の特権です。

■また、私たちは、試行錯誤をし、何度でも失敗をすることが許されています。失敗は、「新たな創造」を行うために、なくてはならないものです。失敗自体が偶然、新たな創造を生み出すこともあります。

■なお、私たちは、直面する試練をどう乗り越えればよいのか、その答えを与えられていません。これはこれまで述べているように、わざと神さま(全体意識)が教えてくれないのです。なぜなら、その答えがすでにあったとしたら、私たちの行動は「新たな創造」とは言えないからです。私たちは、何も知らない中でチャレンジするから、思いもよらない新たな創造を生むことができるのです。

■しかし、私たちは「無知」の状態に置かれているので、私たちに「試練」が与えられている理由も知らないでいます。だから、私たちは悩み、不安を抱きます。そこで、私たちは、「試練」が与えられる理由については理解しておく必要があるのです。

■自由は、常に「不安」と「悩み」とを伴っています。先が見えないから不安になり、どうしてよいか分からないから悩みます。私たちは、不安や悩みを抱えながら、「自分らしくいること」によって、新たな創造を生み出しているのです。不安や悩みは私たちが新たな挑戦をしている証です。

■しかし、不安や悩み自体に価値があるわけではありません。なぜなら、不安や悩みは、自らチャレンジすることを抑制する方向で働くからです。私たちは、悩まず、おそれず、チャレンジをしていくことが大事です。

■いずれ私たちは死んでいきます。死んだ先の世界は、このホームページの各所で述べているとおり全体意識の世界(ワンネスの世界)です。そこは、すべてがつながった世界、すべてを知ることができる世界、完全に自由な世界、完全に受容される世界、自分の価値を認識できる世界です。私たちは、身体を離れる時が来れば、この安定した、無条件の愛に満ちた世界に帰っていきます。

■「今」は、私たちの面前にある試練(新たな状況)に対して、自分らしくチャレンジするときなのです。

☞私たちが理解すべきただひとつのこと